実証実験の進捗状況

最終報告

株式会社 イノフィス

東京都社会福祉事業団 日野療護園で行われていた株式会社イノフィスの実証実験が2020年12月23日に完了しました。

株式会社イノフィスの実証実験は、介助職員による「マッスルスーツEvery」の使用感に関するアンケートおよび筋電計と3Dモーションキャプチャを通じた身体負荷の計測結果を通じて効果検証を行いました。

まず、介助職員からのアンケート結果では、「マッスルスーツEvery」の装着により、介助業務時の負荷が軽減される効果が確認されました。「マッスルスーツEvery」をすることにより、介助業務において「痛みのある部位の有無」、「疲労度」については対象業務全般で、 「ストレス」については特に体位交換において、使用前後で有意に数値変動があり、マッスルスーツの有用性を確認しました。

使用前後の比較(対象業務全般)

株式会社 イノフィス-01

ストレスに関する使用前後の比較(体位交換)

株式会社 イノフィス-02

また、節電計によるシミュレーションでは、介助業務における背中の筋肉(①~④)の活動量を計測することにより、 「マッスルスーツEvery」装着による補助ありの状態と補助なしの状態を比較して、筋肉の活動量が低減していることが確認され、業務負荷軽減の有用性が確認されました。

特に、非介助者を抱えながらイスから床にゆっくりと下ろす動作においては、「マッスルスーツEvery」による補助によって筋肉の動作量が大きく減少しており、定量的な身体負荷軽減が確認できました。

業務 「移乗:床からイス」における筋肉の活動総量
(補助なしの場合の活動総量を1とした場合)

株式会社 イノフィス-03

業務 「移乗:床からイス」における筋肉の活動量の時間推移
(補助あり/なし比較)

株式会社 イノフィス-03
株式会社 イノフィス-04
株式会社 イノフィス-03
株式会社 イノフィス-04

3Dモーションキャプチャーを用いた業務負荷の計測では、「マッスルスーツEvery」装着による補助ありの状態と補助なしの状態それぞれにおける腰椎付近への負荷(腰椎間圧迫力)を比較検証しました。その結果、腰椎付近への負荷(腰椎間圧迫力)が介助業務において低減していることが確認されました。

特に、ベッド上における体位交換をする動作においては、腰椎付近への負荷(腰椎間圧迫力)が大幅に軽減できており、十分に有用性が検証されたものと考えられます。

業務「ベッド上における体位交換」における腰椎間圧迫力の時間推移

補助なし

株式会社 イノフィス-08

補助あり

株式会社 イノフィス-09

凡例: 災害性腰痛を引き起こす危険性があるとされている腰部の椎間板圧迫力値*1

以上の検証結果を以て、看護・介護従事者の業務負担軽減という社会課題の解決に資するものとして、株式会社イノフィスが提供するマッスルスーツEveryの有用性は高いと考えられます。一方で、限られたスペース内での使用や、「マッスルスーツEvery」の着脱の手間などの運用上の課題も確認され、今後、福祉施設等における導入に向けた必要な対応事項等も整理されました。

今後、本実証実験における効果検証の結果を活用し、公共調達による導入などを推進してまいります。

<参考>
*1: 米国労働安全衛生研究所(NIOSH)

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

都立広尾病院、都立墨東病院で行われていたトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の実証実験が2021年2月19日に完了しました(都立広尾病院は2021年1月31日まで実施)。

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の実証実験は、入院患者に対して排泄予測デバイス「DFree」を装着いただき、「DFree」アプリに記録される排泄状況から排尿に関する自立度※1や排泄状態を計測、排泄支援を行う看護師に対するアンケートにより排泄ケアに対する負担感・意識の変化を計測し、効果検証を行いました。
※1:自立排尿率(自立排尿成功回数/排尿回数)として算出

まず、排尿に関する自立度では、「DFree」の装着により、入院患者の過半数の排泄自立度が改善し、また残りの患者についても排泄自立度は悪化することなく維持される結果となり、平均で20.1%自立排尿率の向上が見られたことから、 入院患者の排泄自立度の改善における「DFree」の有用性を確認しました。

排泄自立度(自立排尿率)の改善比率

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-01

排泄自立度(自立排尿率)の改善度合い

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-02

また、排泄状態の改善効果では、「自立排尿回数」、「失禁排尿回数」、「空振り回数」、「おむつ交換枚数」の1日あたり平均回数を検証し、全ての項目において30%以上の改善効果を確認しました。

平均自立排尿回数

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-03

平均失禁排尿回数

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-04

平均空振り回数

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-05

平均おむつ交換枚数

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-06

※1:トイレ誘導時(排尿しなかった)の空振りとおむつ・パッド交換時(失禁していない)の空振りの合計回数
※2:紙おむつと尿とりパッドの1日あたりの合計枚数を集計しています。

排泄支援を行う看護師に対するアンケートでは、看護師の70%以上が「DFree」を活用して排尿パターンを把握し、排尿ケアを実施することは看護業務負担軽減につながると回答し、看護師の50%以上が「DFree」の活用で排泄ケア意識が向上したと回答していることから、 排泄ケアにおける看護師の負担を軽減する効果及び、意識を向上する効果を確認しました。

排泄ケアに対する負担感の軽減

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-07

排泄ケアに対する意識の向上

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社-08

以上の検証結果を以て、入院患者の排泄自立度の改善や看護師の業務負担軽減という社会課題の解決に資するものとして、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社が提供する排泄予測デバイス「DFree」の有用性は高いと考えられます。一方で、「DFree」の導入に係る通信環境の整備や装着時の患者及び現場職員への負担軽減、 現場職員の利用に係る成熟度の違い等の運用上の課題も確認され、今後、病院等における導入に向けて必要な対応次項も整理されました。

今後、本実証実験における効果検証の結果を活用し、公共調達による導入などを推進してまいります。

Holoeyes 株式会社

都立墨東病院、都立多摩総合医療センターで行われていたHoloeyes 株式会社の実証実験が2021年2月12日に完了しました。

Holoeyes 株式会社が提供するCT撮像データをVR空間上に3D化するサービスについて、実証実験では肝胆膵手術の症例に対する解剖学的理解度や腹腔鏡肝切除手術における有用性の検証を医師に対するアンケートやインタビューを通じて行いました。

まず、肝胆膵手術の症例に対する解剖学的理解度に係るアンケートでは、解剖学的理解度を10段階で医師が評価し、従来手法である2Dモニターによる2次元画像・3次元画像と比較して、本実証実験にて実施した3D空間による3次元画像により理解度の向上を確認しました。また、医師の経験値別(※)で比較すると、特に後期研修医において理解度の向上度合が最も高いことを確認しました(最大37.6%改善) 。

解剖学的理解度(全体)

Holoeyes 株式会社-01

解剖学的理解度(医師の経験値別)

Holoeyes 株式会社-02

※上記2グラフは術野を10とした時の解剖学的理解度を示しています。
※医師の経験値別カテゴリーの定義は以下の通り。
後期研修医:手術経験1~10件。初期研修を終え、専門医資格を取得前の3~6年目の医師。
専門医:手術経験11~50件。外科の専門医資格を取得し、さらに経験を積む7~14年目の医師。
ベテラン専門医:手術件数50件以上。専門分野の手術経験を一通り持つ、15年目以上の医師。

腹腔鏡肝切除手術における有用性に係るアンケートでは、サービスの有用性を5段階で医師が評価し、全項目の平均値として4.28という評価を受けており、 3D空間による3次元画像が有用であることを確認しました。項目別でみると、特に「腫瘍位置の把握」が4.50という高い評価を受けていることを確認しました。

腹腔鏡手術における有用性の評価(項目別/平均値)

Holoeyes 株式会社-03

サービスの有用性に係るインタビューでは、手術シミュレーション及び手術前カンファレンスにおける有用性として、医師からは「良いシミュレーションになった」や「エフォート(目的を達成するために使われる精神的・肉体的エネルギーの量)が下がるように感じた」などといったコメントをいただいており、解剖学的理解度の向上におけるサービスの有用性を評価を受けていることを確認しました。

以上の検証結果を以て、手術の効率化や研修効果の向上等という社会課題の解決に資するものとして、Holoeyes 株式会社が提供するVR空間上に3D化するサービスの有用性は高いと考えられます。一方で、 サービス導入に係る通信環境や現場職員におけるオペレーションの定着度の違い等の運用上の課題も確認され、今後、病院等における導入に向けて必要な対応事項も整理されました。

今後、本実証実験における効果検証の結果を活用し、公共調達による導入などを推進してまいります。